他人に任せても解消しない不安な要素、不安は実のうちに相談
「恋愛至上主義」など、まあなんという破天荒、なんというグロテスク。「恋愛は神聖なり」なんて飛んでも無い事を言い出して居直ろうとして、まあ、なんという図々しさ。「神聖」だなんて、もったいない。口が腐りますよ。色気違いじゃないかしら。とても、とても、あんな事が、神聖なものですか。
太宰治『チャンス』
私がもし辞苑の編纂者(へんさんしゃ)だったならば、(恋愛を)次のように定義するであろう。「恋愛。 好色の念を文化的に新しく言いつくろいしもの。 すなわち、性慾衝動に基づく男女間の激情。 具体的には、一個または数個の異性と一体になろうとあがく特殊なる性的煩悶。 色慾のWarming-upとでも称すべきか。」
太宰治『チャンス』
(恋愛のWarming-upにおいて)「もののはずみ」とか「ひょんな事」とかいうのは、非常にいやらしいものである。それは皆、拙劣きわまる演技でしかない。稲妻。あー こわー なんて男にしがみつく、そのわざとらしさ、いやらしさ。よせやい、と言いたい。こわかったら、ひとりで俯伏(うつぶ)したらいいじゃないか。
太宰治『チャンス』
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